千原温泉

千原温泉は「まっとうな温泉」の記事を見て、凄く興味をそそられた温泉。

記事の一部を抜粋


よく、「○○は蜜の味」という言い方がされる。

温泉マニアにとって「○○」は、朽ちる寸前の源泉濃き湯治湯だろうか。

農家の座敷のような部屋から続く風呂が凄い。

圧巻は土を掘って木枠で囲っただけの、緑がかった黄褐色の湯の風呂。

底板のあちこちから湯とともにポコッ、ボコッとガス(二酸化炭素が主成分)が吹き上がってくる。

「夏場は息苦しくなるから扇風機を回して」なんて極楽行きな注意書きまである。

大半の読者には絶対に向いていないし、現代的プライバシーなどほとんど無いが、ここを知ってしまった温泉好きは、一生抜け出られないだろう。



扇風機を回さないと極楽行きですか(笑)

確かに温泉マニアにとっては、極楽のような温泉だ。



きれいかどうか気になるという人は、はじめから無理なので行かないほうがイイらしい。

温泉の析出物で盛り上がった湯舟の木枠や、コンクリート打ちっぱなしの壁や床。

変色した板壁には落書きがたくさん書いてあり、確かに「キレイ」とは言えない。


ここには湯治湯の雰囲気がムンムンだ。



受付に行く手前にトイレがある。

泉温が34.5度と低い湯なので、だいたい30分から1時間は湯に入る。

受付の案内文にも書いてあるが、湯舟に長い時間入るので、まずはトイレを済ませたほうが良い。



以前は無休で営業をしていたが、木曜日が定休日になったようだ。

遠くからこちらに行く方は、木曜日に行かないように注意されたい。


今日の受付はおばあさんだった。

先々代、先代の女将は、

「観光目的だけや健康な方の入湯はお断り」と療養に来た方を大事にして、健康な方は湯に入れなかったそうだ。

どう見てもこの方が「お断り!」と言っていた方には見えない。

この優しそうなおばあさんは、先代の女将じゃないのかなあ?



受付のすぐ隣の玄関から中に入り、左手にある浴室に行く。

暖簾をくぐると、カーテンで男女別に仕切られた脱衣所がある。

カーテンで仕切られただけの着替え室なので、女性は不安に思うかも知れないが、のぞく人はまずいないと思う。(たぶん)



入口を間違える方がいるのか、「男湯入り口」の表示がある。

やっぱりちょっと不安?



服を入れておく棚は12人分。

ここに服が6人分置いてあれば、服を脱ぐのはちょっと待ったほうが良いかも知れない。



この日、脱衣室には6人分ぐらいの服が脱いであった。

「もしかしたら一杯?」と少し不安を感じながら階段を下りると、不安的中。


湯舟は、体育座りで足を縮めて、なんとか6人入れる広さ。

予感のとおり湯舟はギュウギュウ。

人と人の間に、スキマなんてほとんど無い。



千原温泉は今回で2度目の入湯。

前に来たときは4人だったので問題なく入れた。


満員の湯舟を見ながら「やや…これはどうするべきか???ここまで来て入らずに帰るわけにもいかないし…」

湯舟のスキマを見て掛け湯をしながら、詰めればもう1人ぐらいなんとかなるんじゃないかなんて、自分の都合のいいことを考えた。



実際は湯舟の中に一段階段があり、肩をピッタリひっつけ合っても7人が限界。

とても詰めてほしいなんて言えない。



私の困っている姿に同情してくれたのか、1人の方が湯舟から上がられた。

まさに助け舟だ。


ここの温泉に慣れている方は、6人入っていたら引き返し、休憩室で順番待ちをしているようだ。

なるほど、そうすれば良かったのか。

浴室の入り口に「6人入っていたら休憩室で順番を待ちましょう」とか書いてあったら助かるなあ。


機転の利かない私は、掛け湯しながら隙間探したりして、なんともみっともない。

次からはスマートに引き返そう。



1時間ほど湯舟に浸かっていると、だんだん人が上がり、湯舟の奥のほうに行けた。

小さな窓から青空が見えた。

ミンミン蝉の声が響く。

夏も終わりだなあ。



底から湧き出る泡が「ポワン…ポイン…」と高音のはじける音を出している。

なんとここちの良い音なんだ。

小さな泡は浴槽の淵でパチパチと弾けている。


泡はくすぐるように体の表面を駆け上り、マッサージをしてくれているみたいだ。

大好きな微温湯に浸かり、蝉と気泡の弾ける音を聞きながら療養泉に身を委ねる。


しばらくすると炭酸ガスの効果で、体の表面がポカポカと暖かくなってきた。

人が少なくなったので、足も伸ばせてすでに極楽。



湯舟の奥には小さな穴が開いている。

以前はここにコップが置いてあり、この枡から湯を汲み飲んでいたそうだ。

昔は飲用が認められていたようだが、千原温泉はその濃すぎる成分のためか、飲用の許可は下りなかったようだ。



この扇風機だな。

「夏場は息苦しくなるから扇風機回して」の極楽行きな注意書きの扇風機は…


扇風機で空気をかき回し、底板から湯とともにボコボコ吹き上がるガスを拡散するのだが、それでも1時間以上入っていると軽い頭痛がした。

持病に喘息があるので、酸欠になったのかもしれない。

たいてい30分〜1時間入浴されているので、持病のない方には問題ない。



階段横には上がり湯用の五右衛門風呂がある。

春先にこちらに来たときは、寒くて上がり湯が必要だったが、今回は8月末で必要ない。

五右衛門風呂は10月から6月まで薪で沸かしてある。

今の時期は空っぽでバケツが入っていた。


寒い時期には上がり湯が準備されているが、これが男女兼用なのが不便だ。

カーテンで仕切られていて、人がいるのか、男性がいるのか女性がいるのかわからない。

トイレのようにノックもできないし、「誰かいますか?」と声を掛けて、カーテンを開けるときには緊張する。



湯舟が満員のときには、こちらで待てば良い。

ゴロ寝しながら談笑しているおばあさん達が寛いでいた。


常連さんは、部屋休憩(5時間内)1,200円でここを利用する方が多いみたいだ。(上の写真の部屋とは別部屋です)

入湯は大人一回500円。

「部屋休憩を利用して、午前中に一回入湯して、部屋で昼寝、午後に一回入って帰ると2回入湯できるので、実質部屋代は200円だ」
というお話をされていた。



千原温泉の前には川が流れていて、川沿いに温泉を汲む場所がある。

岩をくり抜いた泉源があり、以前は源泉の湧き出るところを見ることができたようだが、観音開きの扉には鍵が掛けられていた。


小さな洞窟の源泉を近くで見たかったなあ。

飲んでみると、鉄っぽくてしょっぱい味がした。



千原温泉は高張性の温泉なので、湯に入ると成分がドンドン体に入ってくる。

ここで温泉を飲むと、体の中からも成分が入り、中と外から温泉攻めだ。

成分総計11.54g/kgのガツン湯に1時間浸かり、心も体も大満足して帰途についた。


一緒に入浴した方のお話によると、千原温泉は温泉津のように原爆症の療養に来る方が多かったそうだ。

火傷の傷跡が綺麗に消えるそうで、お話をしてくださった方も火傷をしてここの湯に浸かり、完治したとのことだ。

遠くから来る人は、通うのが難しいので、近くの民家に泊めてもらいながらここに通う方もいたそうだが、民家も以前より少なくなったみたいだ。


三瓶には兵隊が訓練に来たりして、女性は炊事に駆り出されたとか、戦争中のお話も伺った。

湯治湯は、貴重なお話が聞ける場所だ。


千原温泉ホームページ

HOME

inserted by FC2 system inserted by FC2 system